相続について考え始めたものの、何から手を付ければ良いか分からず、遺言書の作成に二の足を踏んでいませんか。特に自筆証書遺言は手軽な反面、形式不備による無効のリスクがあります。この記事では、自筆証書遺言の作成方法から無効を防ぐ注意点、さらには保管方法までを図解を交えて解説します。読めば、法的に有効な自筆証書遺言を作成し、あなたの財産を確実に、希望どおりに承継させる方法がわかります。安心して未来を迎えるために、一緒に準備を進めていきましょう。
自筆証書遺言とは?そのメリット・デメリット
自筆証書遺言を検討する上では、まず基本を理解することが大切です。手軽に作成できる一方で、特有のリスクもあります。本章では、自筆証書遺言の定義からメリット・デメリット、さらに公正証書遺言との比較を通じて、自分に合った遺言方法を考える手助けをします。
自筆証書遺言の定義と特徴を理解する
Point:自筆証書遺言は、遺言者が全文を自筆で書く遺言書です。
Reason:全文・日付・氏名を自署し、押印することで成立します。費用や手続きが不要で、他人に知られず作成できるため秘密保持に優れています。
Example:例えば、高齢のAさんは自宅で紙とペンを使い、財産目録と相続させたい人や割合を記入し、日付・氏名を自署して実印を押すだけで、自筆証書遺言を完成させました。
Point:ただし形式不備があると無効になるため、正確さに注意が必要です。
自筆証書遺言のメリット・デメリットを比較検討する
Point:自筆証書遺言は手軽で費用がかからない反面、いくつかのデメリットがあります。
Reason:最大の利点は費用ゼロでいつでも作れる点です。一方、形式不備で無効になる、紛失や改ざんのリスクがある、相続時に家庭裁判所の検認手続きが必要になるなどの欠点もあります。
Example:Bさんは日付を「吉日」と書いたため無効とされましたが、Cさんは公正証書遺言にしたことで形式不備の心配がなく、手続きも円滑でした。
Point:メリットとデメリットを理解し、他の遺言方法と比較して選ぶことが重要です。
【ステップ別】自筆証書遺言の書き方を徹底解説
正しい手順を踏まないと遺言は無効になります。ここでは、準備から本文の書き方、日付や署名・押印の方法までをステップごとに説明します。
ステップ1:遺言書を作成する前に準備すること
Point:作成前に財産と相続人を整理しておくことが重要です。
Reason:財産目録を作り、相続人を確定し、誰に何を譲るかを決めておくことで、作成がスムーズになり、トラブルも防げます。
Example:Dさんは預貯金や不動産を洗い出し、相続人である妻と子の情報を整理しました。その結果、遺言内容を明確に決められ、手続きも円滑に進みました。
Point:事前準備が、わかりやすく有効な遺言書につながります。
ステップ2:遺言書本文の書き方と例文
Point:本文はすべて手書きで、財産と相続人を正確に記載する必要があります。
Reason:パソコンやワープロで作成したものは無効です。不動産は所在地、預金は口座番号など、特定できる情報を明確に書きます。
Example:Eさんは本文を手書きで記入し、所有する土地の所在地や預金口座番号を明確に記載しました。その結果、遺言書は有効と認められました。
Point:手書きで正確に記載することが、無効を避けるポイントです。
ステップ3:日付・氏名の書き方と押印
Point:日付・氏名・押印は必須で、遺言の有効性を決める要素です。
Reason:日付は作成日を特定するため必須で、「吉日」などは無効です。署名は戸籍上の氏名を使い、印鑑は実印が望ましいとされています。
Example:Fさんは「令和6年5月15日」と和暦で日付を記し、戸籍名を署名し、実印を押しました。その結果、遺言書は問題なく有効となりました。
Point:日付・氏名を正しく書き、押印を忘れないことが重要です。
無効にならないための注意点|形式不備を防ぐ
遺言が無効になる原因の多くは形式の不備です。ここでは代表的な注意点を紹介します。
日付の記載漏れ・誤りに注意する
Point:日付の欠落や不明確な記載は遺言を無効にします。
Reason:日付がない、または「吉日」といった曖昧な書き方は無効扱いです。修正するときは、訂正箇所に押印し、「〇字削除、〇字加入」と明記する必要があります。
Example:Gさんは日付を書き忘れて無効になりましたが、Hさんは修正箇所に押印し訂正内容を記載したため有効とされました。
Point:必ず正確な日付を記載し、修正は定められた方法で行うことが大切です。
自筆ではない財産目録は添付しない
Point:財産目録はパソコンで作成できますが、各ページに署名と押印が必要です。
Reason:2019年以降、財産目録のワープロ作成は認められましたが、署名・押印がなければ無効となります。
Example:Iさんは署名・押印を忘れて無効になりましたが、Jさんはすべてのページに署名・押印をしたため有効でした。
Point:財産目録を添付する際は、署名・押印を必ず忘れないようにしてください。
加筆・訂正方法を守る
Point:加筆・訂正は定められた方法を守らなければ無効になります。
Reason:二重線で削除し、訂正印を押し、「〇字削除、〇字加入」と記載する必要があります。
Example:Kさんは訂正方法を守って有効とされましたが、Lさんは訂正印を押さなかったため無効でした。
Point:訂正は必ず正しい手順で行い、内容を明確に示しましょう。
自筆証書遺言の保管方法|紛失・改ざんを防ぐ
作成した遺言書は、安全に保管することが大切です。ここでは代表的な方法を解説します。
自宅での保管|リスクと対策
Point:自宅保管は紛失や改ざんのリスクがあります。
Reason:金庫や封筒での封印など、対策を講じなければ安全は確保できません。
Example:Mさんは引き出しに保管して紛失しましたが、Nさんは封筒に封印して金庫に保管したため安全でした。
Point:自宅で保管する場合は、必ず盗難・紛失対策をしてください。
法務局の保管制度を利用する|制度の概要とメリット
Point:法務局に保管すれば、紛失や改ざんの心配がなく、検認手続きも不要です。
Reason:申請すれば法務局で安全に保管され、相続開始後の手続きも簡略化できます。
Example:Oさんは法務局に保管したことで安心でき、相続時もスムーズに進みました。
Point:確実に残したい場合は、法務局の保管制度を利用するのがおすすめです。
※しかしながら、法務局は内容(遺言の文言や法律的妥当性)まではチェックしない ので注意が必要です。自筆証書遺言の 法務局チェックは、主に形式的な瑕疵の有無 の確認のみです。
また、利用には 3,900円の保管料 がかかります。
遺言執行者を指定する|相続手続きを円滑に進める
Point:遺言執行者を指定すれば、相続手続きが円滑になります。
Reason:執行者は遺産管理や分割実行を担い、相続人の負担を減らします。
Example:Pさんは執行者を指定したことで紛争を防げましたが、Qさんは指定せず相続人間で対立が生じました。
Point:遺言執行者を指定することで、手続きを確実に進められます。
※遺言執行者は相続人の中からでも第三者からでも選べるため、弁護士や司法書士といった専門家を指定する人も増えています。
自筆証書遺言の見本とテンプレート|参考にして書いてみよう
実際に書くときは見本を参考にするとスムーズです。ここでは代表的な例文を紹介します。
シンプルな遺言書の例文
Point:財産が少なく相続人が限られる場合は、シンプルな記載で十分です。
Reason:誰に何を譲るかを明確にすれば、短い文面でも有効です。
Example:「私は、私の所有するすべての財産を、妻〇〇(住所・氏名)に相続させる。」
Point:シンプルでも、財産と相続人を正確に特定することが大切です。
夫婦間で財産を相続させる場合の例文
Point:配偶者の生活を考えた内容にすることが重要です。
Reason:自宅だけでなく維持費なども考慮すると、残された配偶者が安心して暮らせます。
Example:「私は、自宅(所在地〇〇)を妻〇〇に相続させる。維持費は私の預貯金から支出する。」
Point:配偶者が生活に困らないよう、具体的に記載しましょう。
特定の人に財産を譲りたい場合の例文
Point:特定の人へ譲る際は、遺留分を侵害しないことが大切です。
Reason:遺留分を侵害すると、相続人とのトラブルが生じます。
Example:「私は、友人〇〇に私の所有する〇〇を贈与する。ただし、遺留分を侵害しない範囲とする。」
Point:遺留分を守りながら意思を伝えることが必要です。
ひな型はこちらよりダウンロードしていただけます。
まとめ
自筆証書遺言は手軽に作れますが、形式不備で無効になるリスクがあります。ここで解説した書き方と注意点を踏まえて作成し、法務局の保管制度や遺言執行者の指定も検討すれば、相続を円滑に進められます。

都内の税理士・行政書士法人に勤務しています。
相続専門の行政書士として、コンサルティングや他士業との連携もしており、死後の手続きから生前相談(遺言や信託)にも精通。
年間面談件数は120件以上、豊富な知識と経験、話しやすさに定評をいただいております。
行政書士 登録番号:21082254 所属:東京会
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