相続手続きを進めようとすると、相続人全員の協力(遺産分割協議書への押印、印鑑証明書の取得など)が必要となります。
その中で、もし会ったことのない相続人がいたらどのように手続きを進めていけば良いのでしょうか。
今回は、会ったこともない相続人にどのようにアプローチをかけていくのかを時系列でご紹介し、その中で注意すべきポイントも解説していきます。
まずは相続人調査を進める
会ったことのない相続人がいるということは風の噂で聞いたが、どこにいるかは分からないという場合、まずは戸籍の収集を進めます。
どこかのタイミングで会ったことのない相続人の記載が出てくるはずです。
ただ、会ったことのない相続人は、例えば腹違いの兄弟であったり、前妻との間の子どもであったりとケースはさまざまなので、集めていく戸籍の順番が大事です。
請求の順番を間違えると、役所から連絡があり、請求権がないので出せませんと言われかねません。
なお、戸籍の収集については、相続手続きに必要な戸籍収集についてを参考にしてみてください。
相続財産の調査を進める
亡くなった方にどのくらいの財産があるかを把握していないと、もし会ったことのない相続人と連絡が取れるようになったとしても、手続きには協力してくれないかもしれません。
上記の戸籍の収集で相続人の調査をするのと同時並行で、財産調査も進めていくとよいでしょう。
手紙を送る
戸籍を収集する際に相続人の住民票もしくは戸籍の附票も一緒に集めると、住所が分かります。
電話番号までは分からないので、その住所宛にまずは手紙を送ります。
私は手紙を送る時に、あなたは〇〇さんの法定相続人で、〇〇さんはこのような財産があります。
そして、あなた(会ったことのない相続人の名前を記載)には法定相続分として○/○の取得分があります。
私の意向としては、このような遺産分割を希望しますが、あなたにも法定相続分があるので、そのご意志ももちろん尊重したいと考えております。
つきましては、回答書(意向に賛成or法定相続分を主張したいorその他など、選択肢を与える)を同封するので、お考えをお聞かせください。
詳しいことを直接お話しさせていただくことも可能なので、お手紙だけのやりとりでなく、お電話ももしよろしければさせていただければと思います。
だいたい上記のような内容で、文面をしっかり整えて送ります。
その際に、相続関係説明図を作成し、財産関係の資料(預金通帳のコピーや残高証明書、不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書)などを同封します。
返事が返ってこなかった場合
返事が返ってきた場合は、その回答書の意向に沿って遺産分割協議書を作成し、再度郵送します。
その際に印鑑証明書を併せて返送してもらいます。
問題なのは、返事が返ってこない場合です。
これではいつまで経っても遺産分割が進まないので、会ったことのない相続人を相手方として遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てていきます。
家庭裁判所から呼び出し状が届くと、焦って出てくるケースは結構あるそうです。
注意すべきポイント
お手紙を送ってコンタクトを取る際にやってしまいがちなのが、相手へ不満を言い、手続きに無理やり協力してもらうような文面にしてしまうことです。
また、しっかりと財産状況が分からないと、もしかしたら少ない財産を伝えられて、不利な遺産分割協議をしようとしてるのではないかと思われかねないので、財産関係の資料をつけたり、法定相続分を明示したりする必要があるのです。
まずは会ったこともない相続人がどういう意向を希望しているのか、相手の気持ちになってお手紙の文案を作成するのが大事です。
もしかしたら今後も、他の方の相続手続きでその方とも再度連携をとっていかなければならないこともでてくるかもしれませんので、その場限りのぶっきらぼうな対応は決してしてはいけません。
この部分の話し合いに自信がない場合は、弁護士に入っていただくというのも考えられますが、彼らの職業柄、相手から見たら威圧感が出過ぎてしまって、逆効果になるケースもないとも限りません。
まとめ
会ったことのない相続人がいる場合の手続きをご紹介しました。
相続人の居場所を突き止め、そこに向けてお手紙を送るというのが基本的な流れになるかと思います。
その際にしっかりと亡くなった方の財産がわかるような資料を添付してあげると、相手からの印象は少なからず良くなるでしょう。
文案作成に自信がない方は、書類作成のプロの行政書士にお願いしてみてはいかがでしょうか?
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