お亡くなりになった方に借金があった場合、その債務を引き継ぎたくないという方は多いと思います。
そこで検討していくのが相続放棄なのですが、意外と注意点も多いので、実務的なポイントも交えながらご紹介していきます。
相続放棄の制度概要、手続きの流れ
相続放棄は、相続があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。
一般的にプラスの財産よりマイナスの財産(負債)の方が多い場合や、相続財産を他の代に承継させたい場合に使ったりします。
この3ヶ月以内の期間を熟慮期間といいますが、この期間に何もせずにいた場合、単純承認とみなされ、相続放棄も出来なくなってしまいます。
葬儀が終わって財産調査をしていると、この3ヶ月というのはあっという間にきてしまうものです。
もう少し相続財産を調査する必要がある場合は、相続放棄の申述期間伸長の申し立てをすればOKです。
これが認められるとさらに3ヶ月間期間が延長されます。
それでは実際に相続放棄をしようと思った場合、どのような流れになるかというと、
①必要書類(被相続人の住民票除票or戸籍除附票、申立人の戸籍謄本など)を準備する
②申立書とともに必要書類、予納郵券を送る
③2週間程度経過後に裁判所から照会書(申立てをした理由や負債の額を返答する書類)が届くので、必要事項記入後裁判所に返送する
④相続放棄の申述が無事に認められれば申述受理通知書が2週間程度で届く
⑤申述受理証明書(登記や債権者に提出するしたりする)の取得が必要な場合は発行依頼をする
このように、基本的に書類の郵送でのやり取りになります。
複数相続人で相続放棄をする場合、負債の額などに相違が出ないように申述書を記入していきましょう。
裁判所 相続の放棄の申述(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)
相続放棄をするときの注意点
相続放棄が認められたからといって、何をしても良いわけではありません。
例えば、不動産の相続放棄をした場合、次の相続人が決まるまでは自己の財産におけるのと同一の注意を持って管理しなければなりません。
次の相続人が決まるまでに建物が倒壊したりした場合は、損害賠償責任を負う可能性も出てきます。
また、相続放棄の申し立てをする前に、賃貸物件の中にある遺品を捨ててしまったり、車を処分すると、財産を処分したとみなされ、相続放棄が出来なくなる可能性もあります。
大家さんから部屋を明け渡してくれと言われて、その対応をしてしまったばっかりに相続放棄ができなくなった…ということもあるようです。
さらに、被相続人が病院で亡くなった場合、その入院費やパジャマ代なども費用も支払い請求が出る可能性があります。
これを、被相続人の預金口座などから下ろして使ってしまうのもアウトです。
しかし、お世話になった病院に対して、入院費を払いませんというのは道徳的にいかがなものかと思われる方も多いと思います。
この部分を回避する方法として、第三者弁済というやり方があります。
その名の通り、被相続人の口座から支払うのではなく、あくまで相続人の固有の財産から支払って、第三者的な立場で債務弁済をしましたというものです。
こうすると、単純承認に該当せず、なおかつ道徳的な部分でも心を痛めることはありません。
まとめ
実務をやっていると、相続放棄を検討される方がいかに多いか分かりますが、熟慮期間を過ぎてしまっていたり、被相続人の財産を処分してしまっていたりして、相続放棄ができないというケースにも遭遇します。
そこで、1番確実な提案としては、相続放棄を検討する可能性があるなら、「何もしないでプロに相談する」のが間違いないです。
プロでも頭を抱えるケースもあるので、債務がありそうな場合は早めに相談するのが良いでしょう。
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