任意後見とは、自分の判断能力がある間に、もし将来自分が判断能力が落ちてきた時に、任意後見人に法律行為をしてもらう制度です。
普段何気なく行なっている銀行からお金を引き出すことや、マンションやアパートなどの賃貸借契約は、一種の法律行為のため、判断能力が落ちてきていると、それが果たして本人にとって有利なのか、不利なのか分かりません。
そこで、判断能力が不十分な人に代わって、銀行からお金を引き出したり契約を締結するサポートをする制度こそ、成年後見制度なのです。
任意後見とは、成年後見制度の一種で、本人の判断能力が低下する前に、サポートをしてくれる人を選んでおき、将来的に判断能力が衰えてきたら、任意後見人の仕事がスタートするというものです。
法定後見制度とは
成年後見制度には、上記の任意後見の他に、法律で定められている後見制度もあります。これを、法定後見といいます。
法定後見制度は、本人の判断能力が低下してから、本人や家族などの申立てにより、家庭裁判所が成年後見人を選任する制度です。
判断能力が低下する前に契約するものが任意後見契約、判断能力が低下してからのものが法定後見ということです。
なお、任意後見は自分の信頼できる方にお願いすることが出来ますが、法定後見は候補者を推薦できるものの、その方にするかは家庭裁判所次第なので、極端な言い方をすると、見ず知らずの人が財産管理などを行うことになります。
厚生労働省 法定後見(https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/type/legal_guardianship/)
任意後見契約の流れ
①任意後見人候補者の選定
→将来的に財産管理や生活をサポートしてくれる人を決めて、どこまでのことをお願いするのか、打ち合わせをして内容を決めていきます。
②任意後見契約の締結
→公証役場で、①で決めた内容を公正証書として残していきます。これは、有効な契約が締結されていることを制度として担保するためであり、本人と任意後見人候補者以外にも公証人を関与させることでより契約内容を確実にし、契約書を公正証書の保管することで改ざんの防止し、契約の安全性を高めるために必須となります。
委任事務については代理権目録を作成し、明確にしていきます。そこには、財産管理に関する行為(預貯金の管理、賃貸借契約の締結など)や、身上監護に関する行為(施設の入所契約や医療契約など)などを列挙していきます。
③任意後見契約を登記する
→上記で公正証書を作成すると、公証人が登記をしてくれます。もし任意後見監督人が選任されて後見事務が開始した場合はこの登記事項証明書を提示することで権限を証明していきます。
④任意後見契約の開始
→本人の判断能力が低下してきたと感じた場合、任意後見契約の受任者(のちの任意後見人)や本人、配偶者などは家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てを行います。
この申立てが相当と認められた場合は任意後見監督人が選任され、以後は任意後見人は任意後見監督人の監督のもとで事務を開始していきます。
まとめ
任意後見制度についてご紹介しました。法定後見と違い信頼できるものに財産管理や身上監護を任せられるため、判断能力が低下してしまったときに備えて契約をしておくことができる非常に頼もしい制度です。この任意後見制度と併せて遺言書の作成や死後事務委任契約、見守り契約なども契約しておくと、老後の不安が少し解決するかと思います。
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